四条金吾殿御返事

令和五年四月度 御報恩御講拝読御書

四条金吾殿御返事しじょうきんごどのごへんじ 御書九九一ページ六行目~九行目
(建治二年六月二十七日 五十五歳)

一切衆生いっさいしゅじょう、南無妙法蓮華経ととなふるよりほか遊楽ゆうらくなきなり。きょうはく「衆生所遊楽しゅじょうしょゆうらく」云云。もんあに自受法楽じじゅほうらくにあらずや。衆生しゅじょうのうちに貴殿きでんもれたまふべきや。しょとは一閻浮提いちえんぶだいなり。日本国にほんごく閻浮提えんぶだいうちなり。遊楽ゆうらくとは我等われら色心依正しきしんえしょうともに一念三千いちねんさんぜん自受用身の仏じじゅゆうしん ほとけにあらずや。法華経ほけきょうたもたてまつるよりほか遊楽ゆうらくはなし。現世安穏げんぜあんのん後生善処ごしょうぜんしょとはこれなり。

通釈

一切衆生にとって、南無妙法蓮華経と唱えること以外に真の遊楽はない。法華経に「衆生所遊楽」と説かれている。この文はまさに自受法楽を説いたものにほかならない。その「衆生」のうちに貴殿が漏れるはずはない。「所」とは一閻浮提のことであり、日本国は一閻浮提の中にある。「遊楽」とは、我等の色心依正ともに、すべて一念三千・自受用身の仏にほかならない。法華経を持ち奉る以外に真の遊楽はない。法華経に「現世安穏・後生善処」とあるのはこのことである。

主な語句の解説

  • 遊楽

遊び楽しむこと。仏法を敬愛し、善を行い、徳を積んで自ら楽しむ法楽の意。

  • 衆生所遊楽

法華経如来寿量品第十六(法華経四四一)の文。「衆生の遊楽する所」と訓読する。

  • 自受法楽

悟りの境界(成仏の境界)を自ら楽しみ法悦を味わうこと。

  • 一閻浮提

仏教の世界観で、人間が住む世界のこと。閻浮提、南閻浮提ともいう。

  • 色心依正

色とは身体(色法)をいい、心とは心及び心の働き(心法)をいう。依正とは依報正報のことで、依報とは衆生が拠り所とする環境世界、正報とは過去の業報によって生じた衆生の身心をいう。

  • 自受用身の仏

悟りの功徳を自ら受け、その悟りの法を自在に用いて衆生を救済する仏をいう。

  • 現世安穏・後生善処

法華経薬草喩品第五(法華経二一七)の文。「現世安穏にして後に善処に生じ」と訓読する。