聖愚問答抄

令和五年七月度 御報恩御講拝読御書

聖愚問答抄しょうぐもんどうしょう 御書四〇九ページ一行目~四行目
(文永五年 四十七歳)

ひとこころみずうつわにしたがふがごとく、ものしょうつきなみうごくにたり。ゆえなんじ当座とうざしんずといふとも後日ごじつかならひるがへさん。たりたるとも騒乱そうらんすることなかれ。それ天魔てんま仏法ぶっぽうをにくむ、外道げどう内道ないどうをきらふ。されば金山こんぜん衆流しゅるうみたきぎさかんになしかぜ求羅ぐらごとくせば、あにことにあらずや。

通釈

人の心は水が器の形にしたがって変わるようなものであり、物の性質は水面の月影が波に揺れるのに似ている。故にあなたは(仏法を)今は信じると言っているが、後日には必ず心を翻すであろう。魔が来ても鬼が来ても騒ぎ乱してはならない。そもそも天魔は仏法を憎み、外道は仏法を嫌う。それ故、猪が金山を摺り、諸河が大海に流れ込み、薪が火を盛んにし、風が求羅を成長させるように、(諸難を資糧とし信心を堅固にしていくならば)それらはむしろ結構なことではないか。

主な語句の解説

  • 猪の金山を摺り~風の求羅をます

『摩訶止観』(止観会本中一八七)に見える。三障四魔に随わず、畏れず、修行を盛んにすることの譬え。

  • 猪の金山を摺り

猪が金山の輝く光を憎み、その光を消そうとして身を擦ることで、かえって金山が輝きを増すこと。

  • 衆流の海に入り

あらゆる河の水を海が受け入れること。

  • 薪の火を盛んになし

種種様様の薪が火の勢いを盛んにすること。

  • 風の求羅をます

求羅は伽羅求羅という虫の略。風が伽羅求羅の微細な身を成長させること。