日厳尼御前御返事

令和四年三月度 御報恩御講拝読御書

日厳尼御前御返事にちごんあまごぜんごへんじ 御書一五一九ページ一五行目~一五二〇ページ三行目
(弘安三年十一月二十九日 五十九歳)

叶ひ叶はぬは御信心により候べし。全く日蓮がとがにあらず。めば月うつ風ふけば木るぐごとく、みなの御心は水のごとし。信のよはきはにごるがごとし。信心のいさぎよきめるがごとし。木は道理のごとし、風のゆるがすは経文をよむがごとしとをぼしめせ。

通釈

願いが叶うか叶わないかは、(あなたの)御信心によるのである。まったく日蓮のとがではない。水が澄めば月が映り、風が吹けば木が揺れるようなものである。あなた方の御心は水のようなものである。信が弱いのは水が濁るようなものであり、信心が潔いのは水が澄むようなものである。また、樹木は仏法の道理のようなものであり、風が木を揺らすのは(法華経の)経文を読誦することであると心得なさい。

主な語句の解説

  • とが

人からとがめられるべきこと。あやまち。過失。

  • 水すめば月うつる

水が澄めば月が映るように、信心が強盛であれば必然的に功徳は顕れることを示されている。

  • 風ふけば木ゆるぐ

風が吹けば木が揺れるように、我々が仏道修行を実践することによって、仏法の道理の上から境界等が好転していく譬え。

  • いさぎよき

汚れがない、思い切りがよい等の意。ここでは強盛な信心を指す。