四条金吾殿御返事 最終更新日時 : admin 令和五年八月度 御報恩御講拝読御書 四条金吾殿御返事しじょうきんごどのごへんじ 御書一五〇二ページ二行目~五行目(弘安三年十月八日 五十九歳) 水みずあれば魚うおすむ、林はやしあれば鳥とり来きたる、蓬萊山ほうらいさんには玉たま多おおく、摩黎山まりせんには栴檀せんだん生しょうず。麗水れいすいの山やまには金こがねあり。今いま此この所ところも此かくの如ごとし。仏菩薩ぶつぼさつの住すみ給たまふ功徳聚くどくじゅの砌みぎりなり。多おおくの月日つきひを送おくり、読誦どくじゅし奉たてまつる所ところの法華経ほけきょうの功徳くどくは虚空こくうにも余あまりぬべし。然しかるを毎年まいねん度々たびたびの御参詣ごさんけいには、無始むしの罪障ざいしょうも定さだめて今生こんじょう一世いっせに消滅しょうめつすべきか。弥いよいよはげむべし、はげむべし。 通釈 水があれば魚が住む、林があれば鳥が飛来する、蓬萊山には玉(宝石)が多く、摩黎山には栴檀が生じる。麗水の山には黄金がある。今この(日蓮が住する)所も同様である。仏菩薩が住まわれる功徳が聚(あつ)まる所である。(身延入山以来)多くの月日をここで送り、読誦した法華経の功徳は大空にも満ち溢れているに違いない。然るに毎年度々の参詣によって、(あなたの)無始からの罪障もきっと今生一世のうちに消滅するであろう。いよいよ励みなさい、励みなさい。 主な語句の解説 蓬莱山 古代中国における伝説上の神山。仙人が住み、不死の薬、金銀の宮殿があるとされた。 摩黎山 南インド、マラクタ国の南方にあったとされる山の名。優れた香木である栴檀を産出するという。 麗水 中国浙江省の河川の名で、多くの金を産出したといわれる。一説には長江上流部(金沙江)とも。 功徳聚 功徳が欠けることなく聚まるの意。聚まるところ。漫荼羅の異称。 虚空 ここでは大空・天空の意。 無始の罪障 久遠の過去から犯してきた成仏の妨げとなる多くの悪業。