高橋入道殿御返事

令和五年十一月度 御報恩御講拝読御書

高橋入道殿御返事たかはしにゅうどうどのごへんじ 御書八八七ページ五行目~七行目
(建治元年七月十二日 五十四歳)

末法まっぽうりなば迦葉かしょう阿難あなんとう文殊もんじゅ弥勒菩薩みろくぼさつとう薬王やくおう観音かんのんとうのゆづられしところの小乗経しょうじょうきょう大乗経だいじょうきょう ならびに法華経ほけきょうは、文字もんじはありとも衆生しゅじょうやまいくすりとはなるべからず。所謂いわゆる やまいおもくすりはあさし。とき 上行菩薩じょうぎょうぼさつ 出現しゅつげんして妙法蓮華経の五字ごじ一閻浮提いちえんぶだい一切衆生いっさいしゅじょうにさづくべし。

通釈

末法に入ると迦葉・阿難等、文殊・弥勒菩薩等、薬王・観音等が譲られた小乗経・大乗経ならびに法華経は、文字はあっても衆生の病の薬となることは決してない。言わば、病は重く薬(の効果)は浅いということである。その時上行菩薩が出現して、妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生に授けるのである。

主な語句の解説

  • 迦葉・阿難

ひいきすること。味方。ともに釈尊の十大弟子。釈尊滅後に付法蔵の第一・第二として経典結集を行い、小乗経を弘通した。

  • 文殊・弥勒

文殊菩薩と弥勒菩薩。釈尊在世にその化導を助けた。正法時代(像法時代とも)に再び出現し、諸大乗経を弘めたとされる。

  • 薬王・観音

薬王菩薩と観世音菩薩。薬王は天台大師、観音は南岳大師として像法時代に再誕し、迹門を中心に法華経を弘めた。

  • 上行菩薩

法華経従地涌出品第十五に出現する地涌の菩薩の上首。法華経如来神力品第二十一において釈尊から結要付嘱を承け、滅後末法の妙法弘通を託された。