法華題目抄

令和五年十二月度 御報恩御講拝読御書

法華題目抄ほっけだいもくしょう 御書三五五ページ二行目~六行目
(文永三年一月六日 四十五歳)

このきょうひたてまつることをば、三千年さんぜんねん一度花いちどはなさく優曇華うどんげ無量無辺むりょうむへん ごう一度いちどふなる一眼いちげんかめにもたとへたり。大地だいちうえはりてゝ、大梵天王宮だいぼうてんのうぐうより芥子けしぐるに、はりのさきに芥子けしつらぬかれたるよりも、法華経ほけきょう題目だいもくふことはかたし。須弥山しゅみせんはりてゝ、かの須弥山しゅみせんより大風たいふうつよくいとをわたさんに、いたりてはりあなにいとのさきのいりたらんよりも、法華経ほけきょう題目だいもくたてまつことはかたし。さればこのきょう題目だいもくをとなえさせたまはんにはをぼしめすべし。

通釈

この法華経に値い奉ることは、三千年に一度花の咲く優曇華や、無量無辺劫の長き間に一度(浮木に)値う一眼の亀にも譬えられる。また大地の上に針を立てて、大梵天王宮から(一粒の)芥子を投げて針の先に芥子が貫かれるよりも、法華経の題目に値うことは難しい。またこちらの須弥山に針を立てて、向こうの須弥山から大風が強く吹く日に糸を渡そうとして、針の穴に糸の先が通るよりも、なお法華経の題目に値うことは難しい。されば法華経の題目を唱えられることは(誠に有り難いことである)と思いなさい。

主な語句の解説

サンスクリット語のカルパの音写文字「劫波」を略したもので、測定することのできない長い時間をいう。

  • 優曇華

経典上では、三千年に一度だけ開花すると説かれる植物の花のこと。開花は、仏や転輪聖王出現の前兆とされる。

  • 一眼の亀

諸経(法華経妙荘厳王本事品第二十七等)の説話に見られる。仏教値遇の難しさを説く。

  • 大梵天王宮

大梵天王の住居。三界中、色界の初禅天にあるとされる。

  • 芥子

植物のケシやカラシナの種子のこと。仏教では、微細なもの、僅かなものの譬えに用いられる。

  • 此の須弥山・かの須弥山

日寛上人は『法華題目抄文段』に「此の須弥山の中央より彼の須弥山の中央に至るまで、十二億八万三千四百五十由旬」(御書文段六六九)と、諸説の一つを示されている。